「本当に財産くれるの?」その3
それから、しばらくお婆さんと警察が話し合い、どんな結論に至ったかは分からないが、
「じゃあ、我々は帰りますので」
と言われ、警察は立ち去った
「お疲れ様でしたー。ありがとうございました」
うーん・・・でも、お婆さんはまだいる・・・
お婆さんは、きれいに掃除された不動産の玄関に目をやりながら
「はぁー・・・トイレに行きたいねー」
とつぶやいた
「トイレはビルの中にありますから、こっちですよ」
私は少しでも早くビルの中に案内しようとあせっていた
だって、寒いんだもん!
こっちは防寒着を着ているわけでもなく、冷たいビル風がビュービューというなかで、ずーと外にいるんですよ!
もう、早くビルの中に入りたくてたまらなかったんです
あぁ・・・それなのに・・・
お婆さんは、ゆっくりゆっくり歩く・・・
お話しながら・・・
(お婆さんは寒くないのか?)
とにかく寒い
ビルまであと15m・・・立ち止まって話す
ビルまであと10m・・・立ち止まって話す
ビルまであと7m・・・立ち止まって話す
ビルまであと5m・・・立ち止まって話す
(あーーーーー!!!!!寒いーーーーー!!!!!)
耐え切れなくなって、私は話の途中でビル内に駆け込み、
「トイレはこちらですよ」
と手招きをした
「あぁー、トイレだったんだねー」
(忘れてたんかい!?)