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軽微な日常

警備員の日常から、思うこと、気になったことなど、いろいろ綴っていきたいと思います。よろしくお願いします!

「本当に財産くれるの?」その1

3年ほど前の1月初め

まだ正月気分が抜けないころ

寒くて、ビル風がビュービュー吹き荒れていた日のこと


1Fの不動産の事務所の女性が、警備室へやってきた

 

「スミマセンが、どうしても正面玄関から座って動かないお婆さんがい

るのでなんとかしてください」

と、困った顔をしてやってきた

その時は、たまたま私一人しか動ける警備員がいなかった

(動かない?動けないの間違いじゃないの?)

そんな事を考えながら、不動産の正面玄関前へと向かった


着くと、たしかにお婆さんが座っている

でも、なんか様子がおかしい

そのお婆さん、防寒対策でいっぱい着込んでいるのは分かる

しかし、なんだか、一見浮浪者のような感じだ

お婆さんの周りには、空き缶や生ゴミが散乱している


そして、そのお婆さんの手には、よれよれの紙


なんとか読もうと思えば読む事のできるキタナイ文字が書いてある

 

『私はこの不動産屋にだまされた絶対に許さない』

というような内容の文章がつづってあった


「お母さん、どうしたの?ここ寒いでしょ?」

私は声をかけた

「私はね、ここにだまされたんだよ!私の土地を取り上げられたんだよ!」

と、今にも泣き出しそうな悲痛な声で私に訴えてきた


不動産の人間は誰も出て来ない・・・何故?

(身なりは貧乏そうに見えるけど、本当はお金持ち?

それとも、土地も家も取り上げられて一文なし?

なんだか分からない

だけど、このままにしてはおけない)


ということで、

「お母さん、このままここにいると、警察呼ばれちゃうから、とりあえず向こうに行こう」

と言うと

「なんだい!あんた、警察じゃないのかい?」

(確かに警備員の格好は警察によく間違われる)

「はい、私はここの警備員なんですよ」

 

「誰が来ても、私はここを動かないよ!

警察でも何でも呼びなさいよ!

私は刑務所に入る覚悟でココにいるんだ!」

 

と言ったかと思うと、正面玄関に飾ってあったみかん付きの正月飾りを

引き剥がして、床の上に叩きつけた