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軽微な日常

警備員の日常から、思うこと、気になったことなど、いろいろ綴っていきたいと思います。よろしくお願いします!

「僕は病気なんです」その2

トイレに着くと、出てきたのは中年のサラリーマンだ


私の姿を見るなり、ビックリした顔で手を顔の前で大きく左右に振った(「今のは、わたしじゃありませんよ!」のシグナルサイン)


私は(分かってます。大丈夫です。)とばかりに大きくうなずく


(お互い話せばいいだろ!とのツッコミは誰もしてくれませんでしたが・・・・)


そして、犯人はトイレの中にいるとがばかりの大きなジェスチャーで、トイレの中を何度も指し示した


若者は、何事もなかったかのように小用を足していた


(やっぱり頭のおかしいやつなのか?)


私は、若者が出てくるまでの間、壁や天井、床などの状況をチェックした


壁には靴で蹴られてへこんだ跡


トイレ内のくずかごは、蹴り飛ばされて、外の廊下にあった


小用を終えた若者は、何事もなかったかのように私の横を通り過ぎて行こうとした


「キミ、ちょっと待って」


私は若者に声をかけた


「はい、なんでしょう?」


と、生真面目そうに答えて振り向いた若者は、大学生くらいで痩せ型でメガネをかけているインテリ風


あまりにも平然としすぎだ


(ホントにこいつがやったのか?)


悪びれた様子など微塵もない


「さっき、ここで暴れてたのはキミ?」


「はい、そうですけど」


とあっさり答えた


「この壁を蹴って凹ませたのも、ごみ箱をここまで蹴り飛ばしたのもキミ?」


「はい、そうですけど」


とまたあっさりと答える


『建造物等損壊罪・5年以下の懲役』


なのだが、若者はすかさず、こう言ってきた


「僕は感情が抑えられなくて、よくこうやって暴れるんです。どうもすいませんでした。」


そう言って、軽く頭を下げるとまたスタスタと歩きだして、この場を去って行った


(「ゴメンで済んだら警察はいらない」なんて言うよなぁ・・・)なんて思う間もなく、とっさに


「ちょっと待て!コラー!!」


(あちゃー・・・衝動的に言っちゃったよ・・・しかも自分でも思いもよらないほどの大声になっちゃって、ホール全体に響き渡っちゃったよ・・・みんなこっち見てるよ・・・恥ずかしー・・・


だって若者は現行犯で、自白して、その上で逃げようとしてるんだよ・・・そりゃ病気なのかもしれないけど、

損害を受けた場合は別でしょ?こんなケースはどうするんだ???)


頭の中では、瞬間湯沸し機で頭に上った血と、これからどうしたらいいのかという思考回路とが絡み合ってダンスをしていた

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