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軽微な日常

警備員の日常から、思うこと、気になったことなど、いろいろ綴っていきたいと思います。よろしくお願いします!

「僕は病気なんです」その3

しかし、呼び止めた以上は後には引けない


「はい、なんでしょうか?」


と、生真面目そうに答える若者の方はいたって平静だ


怒鳴った私の方がおかしいやつみたいやん(悲)


私は絡まった思考をほどくのに10秒ほどかかったろうか・・・


「あー・・・えー・・・っと、キミのしたことは、犯罪なんだよ!壁を直すのに幾らかかると思ってんの?」


「そうですか、でもボクは病気なので罪にはなりません」


とあっさり答えた


(これは、確信犯の手口じゃないか!今までにもやってきたから言えることだろ!?)


「犯罪にはならなくても、壊したら弁償しなきゃないのは分かるよね?」


「そうですね」


とまたあっさり答える


言葉に感情は全くこもってない


確かに病気なのだろうが・・・


「それじゃ、ビルのオーナーサイドに確認してもらって、弁償してもらうようなら、後で連絡するから。身分証か何か持ってたら、コピーさせてもらっていいかな?あと連絡先と。」


「いいですよ。隣の喫茶店に免許証の入ったバックが置いてあるので、持ってきますか?」


淡々と答える


(こんな病気で免許が取れるのか?もしかして逃げる口実か?)


「今、何か持ってる?」


「学生証なら持ってます。でも、免許証の方が顔が写ってるからいいでしょ?」


(やっぱり逃げる口実か?本当に協力的なのか?今度はニヤニヤしているぞ!?わけがわからない)


だんだんどう対応したらいいのか分からなくなってきた


そんなときは、あくまで事務的に接するのが自分を保てる方法


「学生証でいいから、こっち来て」


そして、警備室で彼の学生証のコピーと連絡先を聞いてから


「あとは、ビルのオーナーサイドに確認してもらって、弁償してもらうようなら連絡するから」


そう言うと


「そうですか、それじゃ」


とまたあっさり帰って行った


それから1時間ほどした後に聞いたのだが、喫茶店に戻った若者は、しばらくしてから急に床に横になって、笑ったり泣いたりして騒ぎ続けていたそうだ


喫茶店の人は、どうしたらいいのか分からず救急車を呼んだそうだ


救急車が来ると、彼はまた何事もなかったかのように平然と救急車に自ら乗り込んで行ったらしい


(彼がそうなったたのは私のせい?だとしたら、あの時どうすればよかったのか?見た目では分からない・・・

もし攻撃的なやつだったら、刺されてしまった可能性も?彼は今までにどんな事件を起こしたのか?保護者は?・・・・・)


などといろんな思いが頭の中を駆け巡っているが、未だに正解は分からない


なんだか可哀想な彼を思うと、ビルのオーナーサイドには何も言えず、凹んだ壁はそのままで自分の胸の内にしまっています


警備員としては失格なんでしょうけど・・・

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